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高額療養費制度でカバーできない医療費 – 知っておくべき自己負担と対策

医療費の負担は誰にとっても大きな関心事です。特に高額な治療や長期の入院が必要になった場合、家計への影響は深刻になりがちです。そんなとき頼りになるのが高額療養費制度ですが、この制度だけではカバーしきれない医療費が存在することをご存知でしょうか?

高額療養費制度は医療費の自己負担額に上限を設けてくれる大切な仕組みですが、残念ながら全ての医療費をカバーするわけではありません。この記事では、高額療養費制度の対象外となる医療費とその対策について詳しくご紹介します。将来の医療費に備えるためにも、ぜひ最後までお読みください。

高額療養費制度とは?基本をおさらい

まず、高額療養費制度について簡単におさらいしておきましょう。この制度は、1ヶ月の医療費の自己負担額が一定の金額(自己負担限度額)を超えた場合に、超えた分が後から払い戻される仕組みです。

自己負担限度額は、年収や年齢によって異なります。例えば、年収約370万円~約770万円の方(一般区分)の場合、自己負担限度額は80,100円+(医療費-267,000円)×1%となります。

しかし、この制度を利用しても、なお自己負担となる医療費が存在します。そこで問題になるのが、高額療養費制度でカバーできない医療費なのです。

高額療養費制度でカバーされない主な医療費

高額療養費制度は多くの医療費をカバーしてくれますが、以下のような費用は対象外となります。

1. 保険適用外の治療費

健康保険が適用されない治療や薬は、全額自己負担となります。例えば:

  • 先進医療と呼ばれる最新の治療法
  • 美容整形や歯列矯正などの美容目的の処置
  • 保険適用外の薬(新薬や輸入薬など)
  • 混合診療における保険外の部分

特に先進医療は、がん治療などで注目される治療法も多いですが、数百万円かかるケースもあります。例えば、重粒子線治療は一回の治療で300万円以上かかることもあります。

2. 入院時の差額ベッド代

個室や2人部屋などの特別な病室を利用した場合、差額ベッド代が発生します。この費用は保険適用外であり、高額療養費制度の対象にもなりません。

差額ベッド代は病院や部屋のタイプによって大きく異なりますが、都市部の大きな病院では1日1万円以上することも珍しくありません。長期入院の場合、この費用だけで数十万円に達することもあります。

3. 食事代(入院時食事療養費の自己負担分)

510入院中の食事代も一部自己負担となります。標準的な負担額は1食あたり510円(低所得者は減額あり)で、1日3食として月30日の入院なら約45,900円の負担となります。

4. 交通費や宿泊費

通院や入院に伴う交通費や、付き添いの家族の宿泊費なども自己負担となります。特に専門的な治療のために遠方の病院に通わなければならない場合、この費用は大きな負担になりがちです。

5. 市販薬やサプリメント代

医師の処方ではなく自分で購入した市販薬やサプリメントの費用も、高額療養費制度の対象外です。例えば、抗がん剤治療中に副作用を緩和するためのサプリメントなどは全額自己負担となります。

6. 予防接種や健康診断の費用

任意の予防接種や人間ドックなどの健康診断費用も基本的に保険適用外です。インフルエンザの予防接種は1回3,000円程度、人間ドックは内容によって数万円から10万円以上かかることもあります。

7. 医療費控除の対象にはなるが高額療養費制度の対象外の費用

医療費控除の対象となる費用の中にも、高額療養費制度ではカバーされないものがあります。例えば:

  • 治療に関連する衛生用品(おむつなど)
  • 医療器具の購入費
  • 介護保険サービスの自己負担分

実際にかかる可能性のある自己負担額の例

ここでは、実際のケースを想定して、高額療養費制度を利用しても自己負担となる費用を見てみましょう。

ケース1:がん治療で先進医療を受けるケース

50歳男性、年収500万円のサラリーマンの場合:

  • 先進医療(重粒子線治療):300万円
  • 3ヶ月の入院(一般病棟):保険診療分は高額療養費制度で軽減
  • 差額ベッド代(1日5,000円×90日):45万円
  • 食事代(1日1,530円×90日):約13.8万円
  • 交通費(家族の面会):10万円

高額療養費制度を利用しても、約392.8万円が自己負担となります。

ケース2:難病の長期治療ケース

30歳女性、年収300万円の会社員の場合:

  • 保険適用外の輸入薬:月10万円×12ヶ月=120万円
  • 通院交通費:月1万円×12ヶ月=12万円
  • 保険診療分の自己負担限度額:月約8万円×12ヶ月=96万円(高額療養費制度適用後)

年間で約228万円の自己負担となります。

高額療養費制度でカバーできない費用への対策

高額療養費制度でカバーできない医療費に備えるために、以下のような対策が考えられます。

1. 民間の医療保険に加入する

先進医療特約や入院一時金などが付いた医療保険に加入することで、高額療養費制度でカバーできない部分をサポートすることができます。

特におすすめなのが以下のようなタイプの保険です:

  • 先進医療特約付きの医療保険
  • 入院一時金が手厚い医療保険
  • 三大疾病(がん、心疾患、脳血管疾患)に厚く保障される保険

例えば、先進医療特約は月々数百円の追加保険料で、最大2,000万円まで先進医療の技術料を保障するものもあります。

2. 医療費控除を活用する

高額療養費制度の対象外であっても、医療費控除の対象となる費用は多くあります。年間の医療費が10万円を超えた場合(または所得の5%を超えた場合)、確定申告で医療費控除を受けることで所得税の負担を軽減できます。

医療費控除の対象になるのは:

  • 医師・歯科医師による診療費
  • 治療のための医薬品購入費
  • 通院のための交通費
  • 入院時の部屋代や食事代
  • 介護保険サービスの自己負担分(一定の要件を満たす場合)

確定申告の際には、すべての医療費の領収書を保管しておくことが大切です。

3. 自治体の助成制度を利用する

お住まいの自治体によっては、以下のような独自の医療費助成制度がある場合があります:

  • 子どもの医療費助成
  • 難病患者への医療費助成
  • ひとり親家庭への医療費助成
  • 障害者への医療費助成

例えば、東京都では多くの区市町村で18歳までの子どもの医療費が無料となる制度があります。また、厚生労働省が指定する難病(指定難病)の患者さんは、「特定医療費助成制度」を利用することで医療費の負担を軽減できる場合があります。

4. 公的な貸付制度を知っておく

急な高額医療費が必要になった場合、以下のような公的な貸付制度も活用できます:

  • 国民健康保険・健康保険組合などによる高額療養費の貸付制度
  • 社会福祉協議会の生活福祉資金貸付制度
  • 勤務先の共済会や互助会による貸付制度

これらは無利子または低金利で利用できる場合が多いので、急な出費に備えて知っておくと安心です。

5. 医療機関の相談窓口を活用する

多くの大きな病院には、医療ソーシャルワーカーが常駐する相談窓口があります。医療費の支払いに不安がある場合は、早めに相談することをおすすめします。分割払いなどの対応や、利用可能な公的制度の紹介など、様々なサポートを受けられる可能性があります。

どの民間保険を選ぶべき?自分に合った医療保険の選び方

高額療養費制度でカバーできない医療費に備えるためには、民間の医療保険の活用が効果的です。しかし、数多くある保険商品の中からどれを選べばよいのでしょうか?

年齢や家族構成に応じた保険選び

年齢や家族構成によって、必要な保障は異なります。

  • 20〜30代:将来の保険料負担を抑えるために、若いうちに終身医療保険に加入するのがおすすめ
  • 40〜50代:三大疾病に厚く保障される保険を検討すると良い
  • 60代以上:持病があっても加入しやすい引受基準緩和型の医療保険も選択肢に

また、子育て世代なら子どもの医療保障も考慮した家族型の保険も検討しましょう。

重視すべき特約

特に高額療養費制度でカバーできない費用に備えるなら、以下の特約を重視するとよいでしょう。

  • 先進医療特約:将来的に先進医療を受ける可能性を考えると、若いうちからつけておくのがおすすめ
  • 入院一時金:入院初期にかかる様々な費用をカバーしてくれる
  • 通院保障:外来での治療が長期に及ぶ場合に役立つ
  • 三大疾病保障:がん、心疾患、脳血管疾患に対する保障を手厚くする

月々の保険料の目安

一般的な医療保険の月々の保険料は以下のような目安となります:

  • 30代の場合:月3,000円〜7,000円程度
  • 40代の場合:月5,000円〜1万円程度
  • 50代の場合:月8,000円〜1.5万円程度

特約を付けると保険料は上がりますが、例えば先進医療特約なら月数百円の追加で最大2,000万円までカバーできるものもあり、コストパフォーマンスは高いと言えます。

実際にあった医療費の自己負担事例

実際に高額療養費制度を利用しても多額の自己負担が生じたケースをいくつかご紹介します。

事例1:がん治療で先進医療を選択したAさん

Aさん(55歳男性)は大腸がんと診断され、通常の手術ではなく、身体への負担が少ない先進医療の「ダヴィンチ手術」を選択しました。

  • 先進医療費:80万円
  • 差額ベッド代(14日間):7万円
  • 食事代:約6.5万円
  • 通常の診療費:高額療養費制度適用後約8万円

合計で約101.5万円の自己負担となりました。Aさんは幸い先進医療特約付きの保険に加入していたため、先進医療費の80万円は保険でカバーされ、実質的な負担は21.5万円で済みました。

事例2:難病と診断されたBさん

Bさん(40歳女性)は難病と診断され、保険適用外の治療法も組み合わせて治療することになりました。

  • 保険診療分:高額療養費制度適用後年間約96万円
  • 保険適用外の治療:年間60万円
  • 栄養補助食品:年間24万円
  • 通院交通費:年間15万円

年間で約195万円の自己負担となりました。Bさんは医療費控除を利用して税金の負担を減らすとともに、難病の患者会からの情報を元に自治体の助成制度も利用することができました。

事例3:高度先進医療を受けたCさん

Cさん(62歳男性)は前立腺がんに対して重粒子線治療を選択しました。

  • 重粒子線治療:310万円
  • 診断検査費用:高額療養費制度適用後約10万円
  • 通院交通費・宿泊費:20万円

合計で約340万円の自己負担となりました。Cさんは医療保険に加入していましたが、先進医療特約がなかったため、多額の自己負担を強いられることになりました。

まとめ:高額医療費に備えるための心構えと対策

高額療養費制度は医療費の負担を軽減してくれる大切な制度ですが、すべての医療費をカバーするわけではありません。特に先進医療や差額ベッド代、交通費などは高額療養費制度の対象外となります。

将来の医療費に備えるためには:

  1. 民間の医療保険(特に先進医療特約付き)に若いうちから加入しておく
  2. 医療費控除を積極的に活用する
  3. 自治体の医療費助成制度を調べておく
  4. 緊急時のための貯蓄を用意しておく
  5. 病院の医療ソーシャルワーカーに相談することをためらわない

医療費の負担は誰にとっても大きな不安要素ですが、正しい知識と準備があれば、その不安を軽減することができます。この記事が皆様の医療費対策の一助となれば幸いです。

健康であることが一番の幸せですが、万が一の時に備えて、高額療養費制度の限界と対策について理解を深めておきましょう。将来の安心のための第一歩として、ぜひ自分に合った医療保険の見直しも検討してみてください。​​​​​​​​​​​​​​​​

著者プロフィール
この記事を書いた人
保険太郎

FP1級ファイナンシャルプランナーの保険太郎です。複雑な保険の世界を、わかりやすく、あなたの人生に寄り添うナビゲーターとしてサポートします。

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